その関係が始まったのは、二ヵ月前の出張だった。
業務の見直しとやらで社内システム開発チームにいた者までが顧客先を回る羽目になり、
馴れない仕事と客の前に出る気疲れで、俺は心底参っていた。
七年先輩の佐藤さんと二人、宿泊しているホテルと顧客の間を往復するだけの毎日が一週
間以上も続いた最終日、システム本稼動の打ち上げも兼ねた飲み会でしたたか酔った俺は、
ほとんど正体不明のまま佐藤さんと関係を持ってしまったのだ。
それ以来、二人で出張に行くたびに、彼は俺の部屋に来るようになった。
最初は相互オナニー的なプレイだったのだが、立場上、俺が断れないことに気付いた彼は、
だんだん本性を現し始めた。
「・・・・ぅ・・・くっ」
ソファに座る彼の膝にゆっくりと腰を落としながら、俺は苦悶の息を吐いた。
時間をかけて指で慣らされたとは言え、直腸を埋め尽くす大きさのモノを入れるのは辛い。
「ふ・・っ・・・はぁ・・・っ」
カリ高のチンポが内壁をこする。
「・・・・ひぅ・・・!」
尻の中の性感帯を押されて、思わずヘンな声が出てしまった。
「間が空くと、辛そうだな」
「・・・・・・んぅ・・・・ぅ」
確かに半月ぶりだが辛いのは毎回一緒だ、という言葉を飲み込んで、俺は彼の膝に完全に
体重を預けた。
ちょっとした拍子に、さっき食べた晩飯と酒が込み上げてきそうなほどの圧迫感だ。
しかし背中にかかる彼の息は妙にリラックスしていて、俺は腹立たしさで気を紛らわせな
がら口の中に溜まった酸っぱいモノを飲み込んだ。
「動いてもいいか?」
「まだ・・・無理で・・・す」
弱みを見せたくなくて何でもないふりをしたいのだが、ちょっとでも動くと息苦しくて、
すんなり言葉が出てこない。
彼は俺の胸や太腿をさすりながら、無理せずじっと待っている。
やがて手が萎えてぶら下がっている俺の股間に到達し、やわやわと刺激を始める。
俺は努めて声を出さないように息を詰めた。
俺はこの関係を仕方の無いものだと思っている。
新参者の俺には業務知識も無いし、理不尽な顧客との折衝能力も無い。
つまり、彼の助力無しではマトモな仕事にはならないのだ。悔しいが、彼の機嫌を損ねた
り嫌われたりしたら、一巻の終わりだ。
だから彼が俺に興味を持っているのなら我慢もするが、俺は女の方が好きだし、第一彼に
そういう感情を持っていない。
そのことを分からせるためにも、俺は感じているところを見せないようにしてきたのだ。
確かにこうなった切っ掛けは、俺にも責任があったのだが。
「声、出していいんだぞ」
彼の問いかけを無視し、俺はドアに貼ってある緊急避難経路の案内板を見続けた。
「・・・濡れてきた」
嬉しそうな声とともに、にちゃにちゃと粘液の絡む音が聞こえてくる。
男同士だけあって、その辺のフーゾク嬢がするよりもずっと気持ちがいいのは本当だ。
裏筋からカリ首にかけて、俺の感じるところをいち早く見抜いて刺激してくれる。
亀頭をくすぐるような柔らかい動きから急に激しく茎をしごいたり、彼の愛撫に躍らされ
た俺の肉から、恥骨の奥まで染み渡るような甘い疼きが生まれる。
駄目だ。
感じては、駄目だ。
その時彼が、俺の鈴口から滲み出した汁を塗り広げながら、肉棒全体を皮が引き攣れるほ
どしごき上げた。
「・・・・っ・・・・!」
ざわざわっと快感が背筋を這い登り、同時に括約筋が彼の肉を締め上げる。
俺の悦びを知った彼が、くすりと笑う。
自分の中に深々と刺さっているモノの存在が余計はっきりと感じられて、俺は男性器では
ない別のところから快感が生じるのを恨めしく思った。
「そろそろいいか?」
彼がソファの背にもたれていた上半身を起こし、俺を抱きしめる。
恋人気取りの甘い囁きと熱い舌が、俺の耳の穴に挿し込まれる。
またぞくぞくする感覚が中心を駆け抜け、俺は彼を締め付ける。
「まだです・・・」
俺はそっけない返事だけを返して、今度は天井のスプリンクラーを見つめた。
このまま彼が萎えてくれれば、御の字だ。
「そうだ。今日はオモチャを少し持ってきたんだ」
俺の見え見えの策略など全く気にしていない様子の彼は、ソファの横に置かれた鞄から何
かを取り出した。
腰を動かしていないにも関わらず、彼のチンポは少しも萎えずに熱く固く存在を主張し続
けている。
仕事も何もかも、とにかく打たれ強い人だ。
二ヵ月の間、ずっとこの調子なのだ。
「手、出して」
赤いビニルレザーの手枷が、目の前にぶら下がった。
「君は色白だから、この色が似合うと思ったんだ」
どうでもいいような解説をしながら、彼は俺の手首に手枷をはめる。
その枷は両手がごく短い鎖で繋がっており、俺は拝むようなポーズで両手の自由を奪われ
た。
「・・・こんなモノ付けなくても、逃げませんよ」
「そういう意味じゃないよ」
精一杯の不機嫌を伝えようとする俺に、彼はまたあの囁き声で言った。
「気分の問題だよ。拘束される気分・・・そういうプレイをしているっていう、気分」
拘束なら、俺たちの関係そのものだ。
あんたは仕事を盾に、俺を拘束している。
俺は決して口には出さないが、あんただって気付いているはずだ。
少しの間、沈黙が続いた。
さすがに不快な感情を出し過ぎたかもしれない、と俺は思った。
とにかく、嫌われるのはマズい。
でも、謝るのも何かおかしい気がして、俺はどうしようかと言いよどんだまま彼の言葉を
待った。
こんなにも彼に気を使う自分に、自己嫌悪を覚える。
普通なら断るような行為を続けしかも体裁を繕うのは、仕事のためとは言えあまりにも惨
めだとしか言いようが無い。
「色んな方法で、気持ち良くさせてあげたいんだ」
彼の手が拘束された俺の手を包み込み、指と指が絡み合う。
背中に感じる彼の体温が熱く、甘噛された耳朶がむず痒い。
「最初は指を入れるのにも一苦労だったけど、今はこうやって繋がることができるくらい
になったね」
指は二の腕を通過して乳首を丸くなぞり、内腿へと流れる。
足を開かせるように筋を撫で、それから肉棒をゆるゆるとしごく。
「お尻の中がひくひく動いているよ。気持ちいいんだろう?」
「ぁ・・・・あ・・・あぁああ・・っ」
人差し指と親指で亀頭を掴んで尿道口がぱっくり開くほど強くこすられ、俺は我慢し切れ
ずに声を漏らした。
「そう。この辺も気持ちいいんだよね、君は」
開いたままの肉の割れ目に指が這う。
「んぅあっ・・・そこ・・くぅっ・・・・キツいです・・・っ」
強すぎる刺激に身体が強張る。
尻が咥えた肉をきゅうきゅうに締め上げ、逆に俺の性感帯を刺激した。
「もっともっと、感じさせてあげるよ」
俺はその時初めて、机の上の物に気付いた。
プラスチックケースに入ったそれは、どこででも売っているごく普通の綿棒だ。
彼は一本だけ取り出すと、自分の唾液をたっぷりと含ませた。
「君が知らない性感帯はたくさんある」
彼の左手の人差し指が、思い切り広げられている肛門に触れる。
男を咥えていることを知らしめるように、ぐるりと接合部をなぞられる。
「この奥が感じるなんて、知らなかっただろう?こうやって・・・」
彼が軽く身体を揺すった。
「ぅあ・・うっ」
前立腺を突き上げられ、俺の背中が弓なりに反る。
何かが漏れ出してしまいそうな衝動が、二ヵ月前まで知らなかった場所から湧き出した。
「ちょっと奥を突いてあげるだけで、気持ちよくなれる」
「あ!ひ・・ぃっ!」
腰を使われるたびに先走りがどっと溢れ出し、俺は切ない声を上げながら身をよじる。
拘束された両手はどこかに掴まることも出来なくて、握り締めたまま硬直した。
「ペニスにしても、そうだよ。君はこの内側が感じるなんて、知らないだろう?」
ずぶり、と尿道に綿棒が挿し込まれた。
「ぃひいぃいいっ・・・!!」
「動くと危ないよ」
焼け付くような痛みと言葉には表せない淫猥な疼きが同時に発生して、狭い尿道の中を爆
発しそうに駆け抜ける。
「厭だぁ・・・!イヤ・・んっ・・・痛い!」
「でも、ガチガチになってるね」
尿道に綿棒を挿入したまま裏筋をしごき上げられ、俺は我を忘れて叫ぶ。
尿道の蠕動運動で少しばかり吐き出された綿棒を、彼はそおっと押し戻す。
「お尻だけじゃない。尿道まで犯されるのはどんな気持ちだい?」
その言葉に自分が穴と言う穴を犯されたのだと気付かされ、俺は改めて肛門を蹂躪してい
る男根の存在を意識した。
俺は、男に犯されている。
それも、普通の男なら使わないような場所を二個所も同時に犯されて、先走りでずるずる
になりながら悲鳴じみた甘声を上げているのだ。
「ぁあ・・っ・・・ひぃ・・・いぅぅ・・・」
「泣かなくていいんだ。気持ちいいのは悪いことじゃない」
俺は、いつのまにか泣いていた。
彼は俺の涙を掬い取って、それを乳輪に塗り付けた。
ひんやりとした感触に乳首がぴんと勃って、それを摘ままれて揺さぶられるたびに新たな
快感が俺を襲う。
尻の奥も乳首も、チンポの中までもが燃えるようだ。
「んぅあぁあ・・・っ!・・・・あふぅ・・ふぅ・・・う・・・っ」
「まだイっちゃ駄目だ。我慢しなさい」
ぐりぐりと綿棒が回された。
「あっ・・ぁああああぁああ!!」
痛みが快感に勝って、俺は膝を震わせて泣き叫んだ。
それなのに俺の肉棒は、萎えるどころか今にもはちきれそうなくらい張り詰めている。
尿道の痛みはすぐに快感へと変わり、駆け足みたいな鼓動と同期してチンポを波打たせる。
爆発しそうだ。
今すぐにでも、だらしなく涎を垂らしながらイってしまいそうだ。
「君が厭々付き合ってくれてることは知ってるよ」
「んうぅ・・・」
俺を抱きしめる手に力がこもった。
「君にチャンスをあげよう」
激しい快感でぼやけた俺の頭に、静かな声が響く。
「僕が厭なら、この場で拒め」
「ぁ・・・あ・・・・・っ」
抱きしめられたことで手枷の金具が勃起した乳首に触れ、俺はぶるりと身震いした。
本心を告げるなら、今だ。
このチャンスを逃したら、このままズルズルと関係を続けることになるだろう。
この二ヵ月間思っていたことを言えば良いのだ。
俺が、知りたくも無かったことを教え込まれたこの二ヵ月間、ずっと感じていたことだ。
あんたのせいで、俺はこんな変態行為で感じてしまうようになったんだ。
「こ・・れっ・・・抜いてくだ・・・さぃ・・・っ」
俺は震える手でいきり立った自分の肉棒を包み込んで言った。
背中に押し当てられた彼の額が動きを止める。
俺を抱きしめている手から、力が抜けてゆく。
顔を見なくても、どんな表情をしているのか分かるような動作だった。
彼は無言のまま、そっと綿棒を抜き取った。
あの焼けるような感覚が来て、俺は小便を漏らしたような奇妙な開放感をうっとりと味わ
う。
俺のチンポは、まだ脈打っていた。
尿道にはじんと痺れる感覚があるが、尻の奥から突き上げてくるような快感は相変わらず
くすぶり続けていて、俺はその切なさに身をよじる。
栓を外された鈴口から溢れ出す先走りが陰嚢を伝って、二人の股間を汚してゆく。
俺は意を決して、彼に告げた。
「お願いです。・・・イかせてください」
彼はバネ仕掛けみたいに身を起こし、俺を抱えたまま激しく腰を使った。
尻いっぱいに詰まったチンポが、俺の感じる場所をこすり、突き上げ、抉る。
「ィ・・イ!・・・気持ちイイっ!・・んぅ・・あっ・・!」
腸が熔けて飴になってしまうような快感が、俺の中で煮えている。
俺は別に、彼が好きなわけじゃない。
断れなかったのは、この身体のせいだ。
最初の夜、ヘマをやらかして泣いていた俺を慰めてくれた彼が、とても優しかったからじゃ
ない。
絶対、彼の気持ちにほだされたわけじゃない。
仕事のためで、身体のせいで。
それは俺の二ヵ月間の言い訳そのものだった。
俺は彼の膝の上で腰を振り、泣きながら射精した。
彼も、俺の中に出した。
激しく卑らしい開放感に満たされながら、俺は佐藤さんの体温を感じている。
そう言えば一度も強制されたことは無かったな、とマヌケなことを考えながら、俺は涙で
くしゃくしゃの顔を拭った。
尻も尿道も、手首も痛んでいたが、なんだか笑いが込み上げてきた。




