※この小説はかつて存在した素晴らしいエロ小説HP「男心通信」に掲載された小説「友情」のスピンオフ前日譚です。
春らしい陽気が町を包み始めたその日の午後、孝志は上機嫌だった。昨日の夕方、ゲーセンの裏で叩きのめしたS工業高校の不良は、意外なほどの大金を持っていたのだ。 午前中は学校をいつものようにサボり、これから親友の誠一と一緒に遊びに繰り出す予定である。進学校らしくない染め抜いた髪。見るからに不良とわかる出で立ちの孝志だったが、顔はどことなく優しい女性のような感じでもある。昨日ゲーセンで絡んできた奴も、孝志の見てくれに騙されたと言えよう。孝志は優男のように見えて、空手の有段者でもある。しなやかで美しい肉体から繰り出される攻撃は、不良同士のケンカに随分役だった。孝志と誠一は校内は当然、周囲からも一目置かれる存在であった。
「栄司さん、あいつです」孝志をこっそり尾行する二つの影。顔を腫らした男が、囁いた。
「ほお、なかなかカワイこちゃんじゃねえか。ただボコボコにするにはちっと惜しいな。今の奴隷は徹のせいで使い物にならなくなっちまったから、一ついただいちまおうじゃねえか」
ドスの効いた声で返すのは、S工業高校を仕切っている栄司である。校内では逆らうものはなく、目をつけた美形の生徒を何人も自分達の性のはけ口に仕立てているが、誰も何も言えない。
「おいお前、奴をおびき出せ」
「ええ~っ!マジっすか!?」
昨日ボコられたばかりの手下は尻ごみする。
「何か文句あんのか?」
ギロリと栄司が睨み付ける。節くれだった手がゴキゴキと音を立てた。
明らかにケンカのしすぎでごつごつと岩のようになった手だ。
「は、はい!すいません!」
慌てて手下が走り出す。
「裏の林だ!わかったな!」
手下は決死の形相で呑気に歩く孝志に走りより、尻に思いきり蹴りを入れた。
おもわずつんのめった孝志の美しい顔が、一瞬で紅潮する。
「てめえ、昨日の奴だな!何しやがる!」
子分は必死にS工業高校に向けて走り出した。孝志は怒りのあまり、その危険性に気付いていない。子分はなんとか孝志を振りきって校舎裏の林に駆け込めた。
「貴様舐めやがって!今度こそただじゃ済まさないからな!」
子分を追い詰め凄む孝志。しかし、子分は全く動じない。
「ただじゃ済まねえのはどっちかな?」
「何だと!」
孝志が間合いを詰めると同時に、何かが足に絡みついた。
「うわっ!」
「てめえは足クセが悪ィって聞いたんでなあ。その可愛い顔をこいつで引き裂くわけにはいかねえんで、こういう使い方をさせてもらうぜ」
孝志の足に絡みついたチェーンを握っているのは栄司である。
顔を上げて栄司をにらみつける孝志。ところがその顔色が赤から青に変わっていく。ふと気付くと、回りの木陰から栄司の子分が次々と姿をあらわしているではないか。
いくら孝志でも多勢に無勢。ここが敵地だと気付いた瞬間に、全員が地面で身動き取れない孝志に一斉に飛びかかってきた。
「くそ、嵌めやがったな!」
「おやおや進学校のわりには頭がまわらねえんだなあ」
抑えこまれた孝志に、栄司が屈辱の言葉を投げかける。
「子分の借り、たっぷり返させてもらうぜ」
孝志の首に、スタンガンが押し当てられた。



