| いつもと変わらない、ウィークデーの夜のはずだった。 駅を出て線路伝いに薄暗い通りを歩き、ガード下をくぐる。 人も車も滅多に通らない、狭い小道。 引っ切り無しに頭上を通る電車の轟音が仕事で疲れた頭の中で反響して、余計にダルさを増幅させるようだ。 久しぶりに早い時間に退社できたし、家に帰ってすぐにでも風呂に入りたい。 そうだ、コンビニで晩飯の弁当を買うのを忘れた。 電話料金も払わなくちゃいけなかった。 さっさと銀行振込みにすればよいのだけれど、手続きが面倒でつい後回しにしてしまう。 普段は何とも思わないが、こういう時は結婚してるヤツが羨ましい。 誰かが家で飯を作ったり雑事をやってくれたら、どんなに楽だろう。 いや、結婚したらしたで、他に面倒が増えるのか。 ・・・家の雑事で思い出した。 最近、奇妙なことが多い。 郵便受けにささっていた請求書の封書が破られていたり、忘れないよう夜のうちに玄関に出しておいたゴミ袋が開けられていたり。 アパートの住人の仕業だろうか。 いったい、三十路の独身男の、何を調べる気だろう。 まさか、興信所? とにかく、あんまり続くようなら大家に連絡してみるか。 ・・・それも、面倒だけど。 「・・・んせい・・・」 ぼんやりと考え事をしながら歩いていた俺は、電車が通過し終わってやっと、誰かが声をかけてきたことに気付いた。 「先生」 振り向くと、二十代半ばくらいの男が立っていた。 明るめにブリーチした髪。コーデュロイのライダースジャケット。 ひょろりと背が高くて足も長い。 女受けしそうな顔といい、最近の若いヤツは羨ましい、だなんて考える。 それにしても、見たこともない男だ。 返事もせずに立ち尽くしていた俺は恐らく、訝しげな顔をしていたのだろう。 相手の男の表情がさっと曇った。 「楠本先生」 再び呼ばれた。名前は、合っている。 でも俺はサラリーマンで、先生なんて呼ばれるご身分じゃない。 目の前の男は少し困惑したような緩い微笑みを浮かべて、俺の反応を待っている。 ・・・・・・まてよ。先生って。 そうだ、俺は大学の教育学部在籍中に、教育実習に行ったことがあったんだった。 卒業だけが目的で教師にならなかったおかげで、母校の中学校に実習に行ったことなんてすっかり忘れていた。 あの頃の中学生なら、年齢の計算も合う。 「ええと、二中の・・・」 男の表情がパッと明るくなった。 良かった、合っていたようだ。 しかし相手の素性が分かってほっとしたものの、その先をどうしたものか。 生徒の名前なんて、まったく覚えていない。 10年も前に会った人間の名前なんて、覚えている方がどうかしてると思うけど。 「・・・桂木啓太です。先生」 「桂木君か。久しぶりだね」 名前を言われてもピンと来ないし、当時の顔だってまったく思い出せなかったが、適当に話しを合わせることにした。 なんていい加減な。俺はつくづく教師に向いてない男だな。 「先生、僕のことなんか覚えてないでしょ」 桂木の目が悲しそうな影を落とす。 当然だがやはり、全然覚えていないことはバレていたようだ。 そんな顔をされても、忘れてしまったものは仕方ないじゃないか。 「まぁ、な」 俺は肩をすくめ、言い訳がましく言葉を続ける。 「名前とか顔とか覚えるの、苦手なんだ。それに俺は教師にならなかったから、先生じゃないよ」 桂木がじっとこちらを見たまま動かないので、これで切り上げることにした。 悪いが、今日は疲れてるんだ。 「とにかく、声をかけてくれてありがとう。それじゃ」 返事のない桂木を置いてきびすを返し、歩き出す。 また電車が通過して轟音を上げたその時、コンクリートに響く震動音よりも激しい衝撃が俺を襲う。 顎に強烈なアッパーを喰らい、脳震盪を起こした俺は地べたに崩れ落ちた。 「楠本先生がどこに勤めてるかなんて、知ってるよ」 頭を殴られたせいか、目の前が真っ暗で何も見えない。 雷みたいな電車の音が俺の周りを取り囲んでいて、その奥の方から桂木の声が聞こえてくる。 「住んでる場所も、好きな弁当の種類も、下着の色だって知ってるよ」 何だ?こいつは何を言っているんだ? そんなこと、どうやって調べた? まさか、あのゴミあさりは・・・ 「好きなんだ、先生が」 声が、耳のすぐ横ではっきりと聞こえた。 殴られた顎が、重苦しい痛みを放っている。 同時に下半身の奥の方でモヤモヤとした興奮が勃ち上がり、切なさに眉を顰める。 尻の穴が苦しい。 苦しいのに・・・尻穴の深い場所が疼いてる。 甘酸っぱい、淫靡な陶酔。 クチュクチュと粘っこい音が遠くから聞こえてきて、けだるい全身がいよいよ熱を帯び始め、俺はやっと自分の身に起きている事態に気付いた。 桂木が俺の尻の穴に、指を突っ込んでいるのだ! 「・・・ぁあ・・・」 ねっとりと掻き混ぜられた途端にぶるりと腰が震えて、変な声が出てしまった。 薄っすらと目を明けると、さっきと同じガード下の風景がぼやけて見える。 ガードレールの下から見える車道が、やけに近い。 そうだ、俺は殴られてひっくり返って、気を失っていたんだった。 「先生、気持ちイイ?」 うつ伏せの俺の足側から、桂木の声が聞こえる。 「先生のここ、スゴいことになってるよ」 ブチュッと音がして、さっきからモヤモヤしていた個所、前立腺に電気を通されたような衝撃が走った。 「ぁ・・・ぁああっ!」 「ほら、指、三本も入ってるんだよ。先生って、エッチなお尻してるんだね」 「あぁーーあ!んぁあはぁああっ!」 三本の指で肛門を限界まで広げられ、さらに性感帯をコリコリと揉まれる。 連続した痺れが前立腺を中心にして、波紋を描いて全身に広がってゆく。 「先生ってオナニーするとき、おチンチンしか使わないよね。もっと気持ちイイこと、僕が教えてあげるから」 やめろ!俺はカマじゃないんだ! 誰が・・・尻なんかで・・・・ 「気持ちイイんだね。よかった。もっとヨくしてあげる」 「あっひいぃぃいいいいっ!!」 指の動きが、前立腺を支点にした円運動に変わり、括約筋が上下左右に掻き回される。 その震動は全て前立腺に伝えられ、熱い汁が噴き出すほどの快感が俺の全身を支配した。 触ってもらっていない陰茎もビンビンに勃起して、アスファルトと俺の体に挟まれて悲鳴を上げる。 「お尻の山がピクピク痙攣してる。僕の指、こんなに締め付けられて・・・」 「ひぃあはぁああぁぁ・・・っ」 ぐちゃぐちゃに掻き混ぜる指。 そんな激しく弄らないでくれ・・・っ ああぁ・・・腰が自然に揺れて・・・チンポまで摩擦で気持ちいい・・・ だ、ダメだ!このまま・・・イって・・・ 「先生のお尻、トロトロだ・・・僕、もう我慢できない」 もう少しで射精できそうなところまで追い詰めておきながら、桂木は指を抜いてしまった。 すっかり緩んでしまった肛門がだらしなく口を開け、冷たい夜風が吹き込んでくる。 指は入っていないというのに、散々虐め抜かれた前立腺が痺れたまま疼いている。 軽く息をついただけで肛門がヒクヒクして、それに引っ張られた前立腺がズクンと脈打ち、それだけで漏らしてしまいそうだ。 「先生・・・ずっと、こうしたかったんだ」 桂木のしなやかな手が俺の腰骨を支えて高く持ち上げ、おかげで俺は伏せたまま尻だけ上げた惨めでいやらしい格好にさせられてしまった。 何をする気だ? あ・・・何か、尻の谷間に当たって・・・ 「10年間、ずっと、好きだったんだ」 轟々と爆音を轟かせ、頭上のレールの上を電車が走り抜ける。 「ぎゃあぁあああーーーーーーっ!!」 尻穴を太い肉棒に貫かれた俺は、あらん限りの声で絶叫したが、電車の通過音はその声さえも包み込んで消し去った。 「先生の中、熱くてよく締まって、気持ちイイ・・・」 俺の奥深くまで埋められた、火のように熱い肉棒。 俺の中で脈打って、まるで独立した生き物のように息づく。 ほんの少し位置を変えられただけで凄まじい衝撃が走り、しかもそれは全て前立腺へと伝えられた。 切り裂かれるような痛みと、とろけるような甘酸っぱい快感が交互に襲いかかり、俺は尻穴だけの生き物にされた。 「動くよ」 言うが早いか、桂木の腰が素早く前後にピストンする。 腸壁がめくれ上がるのではないかと思うほどの摩擦の激痛に、俺は再び絶叫し、逃げ場を求めて上体を起こす。 「センセ・・・逃げようったって無駄だよ」 ガードレールに掴まり立ちした俺の腰に覆い被さるように抱き締め、桂木が耳元でうっとりと囁く。 「こっちも弄ってあげるから。ほぉら、気持ちイイんでしょ?」 「あぁん・・・っ」 ピストン運動を止め、前に回った桂木の手がギンギンに勃った俺の肉をしごく。 全身が粟立つほどの甘美な悦びが俺を捕らえ、あられもない喘ぎ声すら漏らしてしまう。 「はっ・・・あ・・・あ!・・・んくぅ・・ふぁ・・・あっ!」 「おチンチンしごかれると、お尻の奥がピクピク締まるんだね」 陰茎を刺激されると下腹が痙攣し、一緒に引き攣れた腸壁が前立腺をも揺り動かす。 俺の尻の中ではっきりと形を主張している桂木の肉棒の、浮き出た血管のゴツゴツとした表面を滑り、微妙な震動を受ける前立腺。 「ふぁあぁ・・・ぁああぁぁ・・・っ」 小便を漏らしているのではないかと思うほど、性器がじんわり熱い。 尻を犯されたまま陰茎を嬲られ、俺は尿道から先走りが小便のように噴き出すのを感じた。 「先生・・・泣いてるの?そんなに気持ちイイ?」 言われるまで、自分が泣いていることにすら気付かなかった。 下半身の性感帯が発する、ジクジクとした快感だけが、俺の全てだった。 「もっといい声、聞かせて・・・」 再開したピストンに押し出されるように叫びながら、俺はザーメン混じりの先走りを吐き出し続けた。 |
(絵師コメント) 教育実習生へ抱いた淡い恋心を描写した・・・つもり。 引き締まった下腹から尻にかけてはお気に入り。(#^ー^#) 最初、背景の雰囲気がなかなか出なかったのですが、 ありがちなペイントを壁面に施した途端に ちょっぴり治安の悪いガード下がみごと完成しました。(笑) |




