古ぼけた小屋の梁が、ギシギシと厭な音を立てている。
梁に通されたロープから『万歳』状態で吊られた俺は、血行の悪さで痺れてきた両腕を揺
する。手首が痛い。
「好きなんだ」
俺が親友だと思っていた男、西村は、うっとりとした目で勝手なことをほざく。
「馬鹿だろ、お前。こんなコトして、俺がどう思うか分かんねえのか」
「・・・・・・」
西村は黙りこくり、皮パンのポケットに手を突っ込んだまま俺を見つめる。
「こんな状況で告られて、喜ぶヤツがいるかよ」
「だったら!」
突然の大声に、今度は俺の方が沈黙する。
「普通に告ったら、お前、どうした?」
強い視線だった。
「お前が罵る顔も、俺をボコることも、すぐに想像できる」
怒りとも悲しみともつかない視線に射抜かれ、俺は心臓が一瞬止まった気さえした。
「でも俺、お前が好きなんだ」
少し泣きそうな顔。
そんな顔をして、まるでこっちが悪いみたいな口振りで。俺は相手の身勝手さに怒りを覚
える。
俺の気持ちはすぐに顔に表れたのだろう。西村はまた口をつぐみ、多少うな垂れたように
見えた。
「これ、外せ」
「嫌だ」
「じゃあ、このあとどうする。このままってわけにはいかないだろ。いつかは外さなきゃ
いけない。そん時はどうする?俺、お前を許さないぞ。それともこのまま俺を殺すか?」
「そんなことはしない!」
「だったらどうすんだ!今すぐ外せ!」
こうなるともう、怒声の応酬だった。
俺は西村に罵声を浴びせ、西村が屁理屈を並べる。
無駄な時間が経過した後、西村はポケットから小さなバタフライナイフを取り出した。
「お前・・・!」
刃物の登場に俺は血の気を失い、相手を刺激しすぎたことを後悔する。
殺されるのか?俺はこのまま殺されるのか!?
「どうすればいいかなんて、俺にも分からない。でも・・・」
冷たい刃が首筋に当てられ、俺は息を詰めて硬直する。
ほんの少しでも動いたら皮膚を切り裂かれそうだ。
親友が恐ろしい怪物に見える。
恐い。助けてくれ。俺が折れるから。頼む。
俺の顔は恐怖で引き攣ったけれど、声は出なかった。
ナイフがゆっくりと首筋に沿って下り、Tシャツの襟元に引っかかる。
そのままグイと引かれて身体が前後に揺れた。
「ひっ」
情けないほど弱々しい悲鳴が喉から漏れてしまった。
「俺が恐い?」
西村は微笑んでいた。
弱いものをいたぶる人間特有の、悪意に満ちたギラギラした目をしている。
鎖骨の間をちくりと押され、俺はひゅうひゅう鳴る喉をぴくりとも動かすまいと、息を止
める。
脇の下から流れた冷たい汗がTシャツに染みを作る。
西村の左手が襟首を掴んで俺の方に引き寄せる。
やめてくれ!切っ先が喉に刺さってしまう!
西村の口が、にいっと大きく笑った。
喉元から裾まで、Tシャツはあっけないほど簡単に切り裂かれた。
ビリビリという音、引っ張られる布のために揺れる全身、時折当たる刃の冷たさ。
それらすべてが俺の心の中から恐怖を引きずり出し、ちょっとした刺激で破裂しそうな風
船みたいに膨らませる。
怯えて動けない俺の身体から服がむしり取られる様は、抵抗する意思を削り取る行為を象
徴しているかのようだ。
程なく肌に絡み付いていた生地はすっかり取り払われ、俺は上半身裸にされてしまった。
「綺麗だ」
そう言いながら西村がナイフをポケットにしまったので、俺はやっと呼吸を取り戻す。
「西村・・・頼む。助けてくれ・・・」
俺の声が、震えている。
弱りきった、哀れな声だ。
泣き出したいのを必死で堪えている、そんな声。
西村の視線はいよいよ残酷な光を湛えて、俺を見据える。
「武藤の身体、すごく綺麗だ」
冷たく乾いた手のひらが胸を這い、細い指先が左の乳首を捕らえる。
ざわりとした感覚でつんと勃ったそこを摘み、何かのスイッチをひねるようにねじる。
「痛い・・・西村、やめてくれ」
俺の願いは聞き届けられなかった。
それどころか、西村は両方の乳首を摘み、引っ張ったり転がしたり、爪先で弾いたりする。
脇腹や背筋にゾクゾクする何かが走り、俺は再び全身を硬直させる。
痛みだけではなかった。
初めは確かに痛かったのだが、むず痒くてくすぐったいような奇妙な感覚。
俺は、西村に乳首をこねられて感じている?
気持ちは恐怖と怒りで満ちているのに、身体はいやらしい愛撫に反応しているのか?
嫌だ!こんなのは、嫌だ!
急に西村の手が離れ、俺は強張っていた体の力を抜く。
だが、ベルトを外す金属音に、俺はまたも全身の筋肉を緊張させた。
「なにするんだ!やめろ!」
不自由な身体をねじり、片足立ちになって西村の足元を蹴る。
西村の目的が分かった以上、とにかく必死だった。
「暴れても無駄だよ」
俺を吊るロープが引かれ、爪先立ちにされる。
両腕も背中も軋み、ロープの食い込む手首に激痛が走る。
「痛い!痛・・いっ、降ろしてっ」
ズボンと下着が同時に引き下ろされたが、俺には為すすべが無い。
萎えきって縮んだ陰茎が、重力にしたがってだらりと下がる。
湿り気を帯びたそこが空気に晒されてひやりと冷え、下半身を剥き出しにされたのだとい
うことを、なお一層思い知らされる。
「ああ、こんなに縮んじゃってさ」
竿も玉も一まとめに、ぐっと握り込まれた。
「萎えてても結構デカいね。勃起したとこも見たいな」
右手でカリ首を揉まれながら、左手で陰嚢を転がされる。
左手の親指と薬指と小指、三本指で器用に圧をかけられながら、残った二本の指で会陰を
刺激された。
「いっ!あっ!」
グニグニと睾丸を圧迫されると、まるで電気が走ったような激しい痺れが下半身を覆い、
俺はほとんど動かせない身体を捩って逃げようとする。
だが、爪先立ちではどうしようも無いのだ。
ぐぐっと会陰を押されると、睾丸への痛いほどの刺激で敏感になった陰部から、せり上がっ
て来るような悦びが生まれる。
「あ、あーーっ・・はぁっ・・ヤメっ・・・!」
「硬くなってきた。武藤、チンポの先とキンタマの裏が感じるんだな」
「ああっ、それ、キツいっ!んう・・っ・・・っ」
「キツいくらいに先っぽをしごかれるのが好きなんだろ?」
西村の強引な愛撫は、止むどころかますます激しくなる。
そんなに亀頭をしごかないでくれ!尿道、弱いんだ!
「もっと声、出せよ。もう我慢汁ダラダラなんだからさ」
「西・・・っ・・・ぁあっ・・・ヤメてくれっ・・・尿道はイヤだっ」
「・・・あれ?武藤・・・・」
会陰を弄っていた指が、さらに奥をまさぐる。
「お前、こっちも濡れてる」
人差し指が肛門を撫で、クイクイと押し上げる。
「チンポとキンタマだけじゃ物足りないのか?」
俺の顎のあたりに唇を近づけ、西村が淫靡に囁く。
「お望みどおり、こっちも掻き回してあげる」
「そんなことヤメろ!イヤだ!」
西村が自分の指を口に含み、わざとびちゃびちゃと音を立ててしゃぶる。
熱に浮かされたように潤んだ瞳が、涙声で叫ぶ俺の表情をうっとりと眺めている。
「奥まで咥えろよ」
吐き出された指は唾液でべっとりと濡れていて、それが尻の谷間に触れた瞬間、俺の下半
身にゾクリと悪寒が走る。
「西村、頼むからやめてくれっ・・・他のことなら何でもするからっ」
「入れるよ」
ぶじゅっと音がして、直腸に二本の指が侵入する。
「ぁ・・・あっ・・・あっ」
「わりと簡単に入ったね」
西村の言葉どおり、指はあまりに簡単に腸の中に潜り込んだ。
痛みは無く、ただ何とも言えない奇妙な圧迫感だけが尻を満たしている。
「どこかな・・・・?」
「うぅ・・ぅ・・・・っ」
二本指で腸内を探られるのは、内臓に直接触れられている恐怖からか、俺の陰茎を萎えさ
せる。
たった二本の指なのに、尻いっぱいに詰め物をされたみたいだ。
それが縦横無尽に内部をまさぐるのだから、恐ろしい以外の何物でもない。
「恐・・ぃ・・・やめて・・っ・・・ぁ・・・っ」
「気持ちイイところ、ちゃんと探してやるから」
「西む・・・・ぁ・あっ・あぁあああっ!あ・はぁあっ!」
「ああ、あった」
嬉しそうな西村の声は、俺の耳には届かなかった。
突き入れられた指が、俺のGスポットを捉えたのだ。
「あぁああーーーっ!ああーーっ!」
なんで、尻の中がこんなに感じるんだよ!?
ちんぽをしごかれるのよりもスゴい!今すぐ漏らしてしまいそうだ!
そんなに掻き回さないでくれ!
「あはは。さっきより硬く勃起してるぜ」
「ああぁあーーっ!イヤだ!イヤだ!・・イっ・・あっはあぁぁっ」
「ほら、チンポも揉んでやるから」
前立腺と陰茎に同時に刺激を受けて、俺は絶叫した。
「ひいーーっ!ひいぃーーっ!」
「乳首もビンビンになってる」
ぺろりと突起を舐められ、ビリビリと電流が全身を流れる。
俺は気が狂いそうだった。
愛撫と言うにはあまりに激しすぎて、かえってイくことが出来ないのだ。
身体の内側から爆発しそうな快感を煮え滾らせ、俺は絶叫し続けるしかない。
涎も我慢汁も腸液も、何もかもがダラダラと流れ出して、俺は俺自身が熔けて無くなって
しまうのではないかと思った。
「好きだよ」
西村が囁き、尻を穿つ指が、俺の奥深くを押し上げる。
「ぁあーーーーーっ」
俺は盛大に叫んで射精した。
心の中で張り詰めていたものが、一瞬のうちに砕け散ったような気がした。






